NuvotonのNAU83G60YGは、Class Dパワーステージと低遅延DSPを組み合わせたステレオスマートアンプ。24V電源と4Ω負荷の条件で2×30Wを出力し、パラレルBTL接続では2Ω負荷に30Wを供給できる。電源電圧は8〜24Vに対応し、据え置き機器からバッテリー駆動、車載まで幅広い構成を想定している。
中核となるKlippel Controlled Sound(KCS)は、スピーカードライバーの機械的、電気的、熱的な限界をリアルタイムで管理する適応型の非線形制御技術。アンプ出力の電圧と電流を継続的に解析し、個体差や温度変化、経年変化を踏まえながら、振幅超過やボイスコイルの過熱を防ぐ。
保護を早めにかけて一律に出力を抑えるのではなく、ドライバーの動作範囲を把握したうえで使える領域を引き出すのがKCSの考え方だ。非線形ひずみやボイスコイルのDC変位も補正対象となり、小口径ドライバーを大振幅で動かす場面では、低域の量感と明瞭度を保ちながら出力を高められる可能性がある。
DSP部には2基の15バンド・パラメトリックEQ、クロスオーバー、ミキシング機能を内蔵。処理遅延は構成により約0.7〜2msで、I²S、PCM、TDMの各音声形式と最大192kHzのサンプリングに対応する。外付けDSPを減らしつつ、音質調整から保護、診断までをまとめられる設計だ。
想定用途は会議用スピーカーフォン、車載のロードノイズ制御、テレビ、サウンドバー、ノートPC、ワイヤレススピーカーなど。特にエコーキャンセルやアクティブノイズ制御では、スピーカーの非線形ひずみを抑えた参照信号と低い処理遅延が、システム全体の安定性に直結する。
